カワイES920を購入しました

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2019年にコルグD1を購入して5年半ほど使ってきましたが、このたび1月末に新しい電子ピアノに買い換えました。今回は買い換えに至った理由と機種選定のポイントについて書いてみたいと思います。詳細なレビューはもう少し使い込んでから書きます。

買い換えに至った理由

コルグD1はスピーカーを内蔵しないステージピアノというジャンルで、コルグ最高峰のRH3鍵盤を搭載し、堅牢な木製ボディーを採用しています。それでいて約5万円で買えるリーズナブルさから今でも人気のモデルです。自分もかなり気に入って使っていたのですが、ここへ来ていくつかの不満点が出てきました。

音に飽きが来る

このクラスの電子ピアノはどれも似たり寄ったりですが、音源の波形容量がそれほど大きくありません。現代のサンプリング音源は波形をメモリーしてピアノ音を再生しているため、安価な機種はどうしても容量節約の点から波形容量は小さくなりがちです。容量を節約するためにはピアノの鍵盤1つ1つではなく、2~5鍵盤くらいを1つの波形で共有して使い回しされます。タッチの強弱による波形変化もそれほど細かくは分割されていません。たいていは2~4段階程度です。また音色の時間変化についてもそれほど長い時間は収録されていないため、たいてい2~3秒以降はループで引き伸ばされているだけです。したがって耳が肥えてくるほど安っぽく聞こえてしまいます。

弾き方によるニュアンスの違いもほとんどわからず、どのように弾いても金太郎飴のように同じ音しか出てこないところは長く使っているほど飽きが来てしまいます。

音作りがほとんどできない

これも音質に関するものですが、D1に内蔵されているグランドピアノ音源はおそらく1種類しかありません。一応グランドピアノ音色は3つありますが、フィルターやイコライザーをいじって味付けを変えただけで、サンプルとしては1種類しかないと思います。自分で変えられるパラメータとしてはブリリアンス(音の明るさ)とタッチカーブくらいしかありません。それもわずか3段階しか選べないため、好みの音質にすることが非常に難しいです。

あとこのクラスの電子ピアノ全てに言えることですが、音作りをしても設定を保存することができませんので、電源を切ると全部リセットされてしまいます。まあ設定できるパラメータはごく少ないのでその都度やり直しても実質的に問題はないのですが。

3本ペダルが使えない

エントリーモデルでも別売で3本ペダルを使える機種は多いですが、D1は物理的に通常のダンパーペダルしか接続することができません。まあ実用的にはそれでほぼ問題ないのですが、クラシックピアノの楽譜にはたまに弱音ペダルの指示がある場合があります。本物のピアノを弾く場合に普段から練習してないとできないので、やっぱり3本ペダルは使えた方がいいですね。

鍵盤のタッチが物足りない

D1に搭載されているRH3鍵盤はそこそこの重さがあり、アコースティックピアノに近いタッチでかなり評価の高いものです。たぶん電子ピアノだけを弾くならそれで何の問題もないレベルだと思います。使い慣れているということもありますが、とても弾きやすくて気に入っていました。

しかしピアノサークルに所属していろんなピアノに触れる機会が増えると、どうしても弾きにくいと感じるピアノがあるんですよね。やっぱり弾きにくいピアノは鍵盤が重いんです。D1も電子ピアノとしては結構重い方なんですが、あまりにも弾きやすいのが仇になって重いピアノに当たると全然弾けないということがありました。やっぱり普段から重い鍵盤に慣れておかないといざという時に困るなと思いました。アコースティックピアノを弾きこなすには指の力をもっと鍛える必要があります。

MIDIキーボードとしての問題点

D1内蔵の音色に不満があれば、本体はMIDIキーボードとして利用しPCのソフトウェア音源を使うという方法もあります。確かに最近のピアノ音源は超大容量ですから非常にリッチな音色で演奏することができます。ただその場合に少々困るのが鍵盤とソフトの相性です。鍵盤から出力されるベロシティー(音の強さ)は機種によってまちまちであるため、通常のタッチでは十分な強さが引き出せない場合がよくあります。そうするとややこもった音に聞こえてしまいます。また音域による音量のバランスも必ずしも均一ではなく、低音が強く高音が弱くなってしまうこともよくあります。

そういう鍵盤特有のクセをソフト側で調整する機能があればまだいいのですが、なければどうすることもできません。やはり鍵盤の特性に合わせて最適化された内蔵音源のバランスの良さには敵わないのです。

もう一つ重大な問題として、ダンパーペダルを踏むタイミングが一瞬でも遅れると音が途切れてしまうという現象がたびたび起こりました。これはおそらくダンパーのMIDI信号が送信されるタイミングが微妙に遅れるのが原因だろうと思っています。後にこれはD1特有の問題であることがわかりました。

次の電子ピアノに求める条件

今までと同じクラスのものを買っても変わり映えしませんから、どうせ買うなら1ランク上の製品を選ばなければなりません。そうすると10万円超が相場になりますね。上限は15万円くらいとします。もうピアノは一生の趣味にすると決めてますから、そのくらいの投資は惜しくありません。

私が電子ピアノに求める条件は非常にシンプルです。要するにピアノとして気持ちよく弾ければいいんです。どうせピアノ音色以外は使いませんから、音色数などはどうでもいいです。録音や自動伴奏など付加的な機能は判断の材料にはなりません。自分が絶対に外せない条件として次の点を挙げておきます。

  • 音色が良いこと
  • 鍵盤のタッチが良いこと
  • 音作りの自由度が高いこと
  • 音色を保存できること
  • 3本ペダルが使えること
  • 同時発音数がなるべく多いこと
  • 操作性が良いこと
  • 重量が軽いこと
  • 譜面台が付いていること

据置型を買ってはいけない

10万円クラスになると悩ましいのが据置型との選択です。12~13万円出せば結構いい据置型が買えるので、その方がコスパが良さそうに思えます。もちろん据置型の方が安定性が良く、スピーカーも大きなものを搭載できますから音質も良いはずです。自宅でじっくり弾くには据置型の方がメリットが多いように思えてきます。

しかし据置型ではなくあえてポータブル型を選ぶ理由があるのです。それは可搬性と買い換えの容易さです。据置型の電子ピアノは重量が40kg以上あるため、一度設置してしまうと一人で動かすことはできません。ライブで外へ持ち出すのでなくても部屋の模様替えなどで移動させたいことはよくあるはずですが、据置型を買ってしまうと二人がかりでないと動かせないのです。それでも1階から2階に上げるのは相当困難でしょう。

さらに困るのが買い換えの時です。電子ピアノというのはデジタル機器であるため、スマホやパソコンと同じように年々進化しています。そのため5年も経つとかなり古さを感じるようになります。10年も経つとすっかり時代遅れになって一番安い機種にも見劣りするくらいになります。そうなれば換金価値は限りなくゼロです。

ですから電子ピアノは常に買い換えを前提にしなければなりません。今いくら満足していても10年近く経てば必ず買い換えたくなるはずです。その時に据置型だと処分に困るのです。大きなものは自分で運べませんから、電子ピアノ専門の買取業者に引き取ってもらうしかありません。それも値が付かないほど古いと買取を断られたり、粗大ゴミとして処分料を取られることもあります。

その点、ポータブル型であれば自分でリサイクル店に持ち込むこともできますし、出張買取を依頼することもできます。最悪故障して動かなくなったとしても、粗大ゴミとして自治体に回収してもらうか、自分でクリーンセンターに持ち込むことは可能です。

値段がそれほど高くない据置型に揺らぐ気持ちはわかりますが、後々のことを考えると絶対にポータブル型が有利なのです。

比較検討した機種

今回購入するにあたって各メーカーの同一価格帯の中から比較検討しました。具体的な機種名を挙げてみます。

  • YAMAHA P-525
  • Roland FP-60X
  • Roland FP-E50
  • KAWAI ES920
  • YAMAHA CK88
  • Roland RD-88EX

今回コルグが候補に挙がらなかったのは同一価格帯の製品がないからです。

ステージピアノは目的に合わない

このうち下の2つはステージピアノというカテゴリーに属するので一般的な電子ピアノとはちょっと性格が違います。両機種とも一応スピーカーを内蔵していますが、オマケ程度の小さなもので本格的に演奏するには向きません。やはり外部スピーカーが必要です。それと致命的な問題は譜面台がないことです。ヤマハはオプションで譜面台を付けられますが、それが1万円というとんでもない値段なのであり得ないと思いました。譜面台がないと後ろに三脚付きの譜面台を置く必要があり、これが自宅内では結構邪魔になるのです。ステージピアノはもともとライブパフォーマンス向けにリアルタイムで音色をいじれるツマミ類を装備したものであり、そういう機能は純粋にピアノを弾くのに必要ないと判断し最終的に候補から外しました。

余計な機能はいらない

このうちローランドのFP-E50はちょっと性格が異なるもので、いわゆる自動伴奏キーボードに近いものです。鍵盤はFP-60Xと同等のものを採用していて立派なピアノタッチですが、ピアノ以外の音色を多数搭載しているのが特徴です。この中では値段が一番安いのでお得感があることから一時は注目しましたが、やはり肝心のピアノ音がいまいちなのです。デモの音源を聴き比べて、他の機種より音が薄っぺらいと感じたのでこれも除外しました。やはりピアノを弾くのに自動伴奏のような機能は必要ないし、そういう目的ならすでにコルグのシンセを持っているからです。

E920を選んだ理由

音色の好み

最終的にP-525, FP-60X, ES920の3機種に絞られました。ピアノの音色についてはYouTubeで聴けるデモ演奏を聴き比べてみました。ヤマハは良くも悪くも普通のピアノの音という感じです(笑)。ローランドはキラキラした明るめの音色で少し人工的な感じもします。そしてカワイは中低音がしっかりした重厚な音で、高音は優しい感じの響きがします。このクラスになるとおしなべて悪い音色というのはないので結局は個人の好みになるのですが、自分としてはカワイの音色が自然で最も好ましいと感じました。

タッチの好み

このクラスになるとどの機種もそこそこ良い鍵盤を採用しているのでピアノ演奏には十分な性能を持っていますが、やはり個人的な好みというものはあります。といっても実機を触ることはできないのですが、同じメーカーの同等機種を触った限りでは、カワイが一番重いという印象があります。私は本物のピアノを弾いたときに違和感がないことを最も重視しますので、できるだけ重い方がいいのです。普段から重い鍵盤に慣れておけばどんなピアノに当たったとしても戸惑うことはないはずです。

スペックがはっきりしている

スペックの表記の仕方は会社によってまちまちで、この中ではカワイが最も詳細に書いている感じがします。一方、ローランドはあえて細かいところを書かない傾向があります。たとえばピアノ音源のベースとなるサンプリングについて、カワイは自社製のSK-EX, EX, SK-7というグランドピアノであることを明記し、88鍵サンプリングであることも明記しています。ヤマハも自社製のCFXとベーゼンドルファーのインペリアルであることは明記していますが、88鍵サンプリングかどうかまでは書いていません。一方、ローランドはサンプリングについては何も公表していません。

音作りの自由度が高い

各社ともピアノ音色は好みに合わせてチューニングできる機能を備えています。メーカーによって呼び名は異なりますが、ヤマハではピアノルーム、ローランドではピアノデザイナー、カワイではコンサートチューナーと呼んでいます。この機能により、タッチの強弱や音の明るさ、共鳴の度合いなどを自分好みに調整することができます。

中でもカワイのコンサートチューナーは群を抜いていて、全部で21項目も設定することができます。たとえばハンマーのフェルトの硬さや音量のバランスを88鍵全てについて調整できるマニアックな機能まで備えています。その他、高音弦の共鳴、ボディーの共鳴、打鍵のノイズ、ハーフペダルのかかり具合や最弱音のレベルまで細かく調整できるなど、まさに調律師が行うようなチューニングを自分でできる楽しさがあります。さすがはピアノメーカーらしいこだわりが感じられ、この点に最も惹かれました。

機能が充実している

このクラスになると付加的な機能は似たり寄ったりで、音色の保存のほか、イコライザー、録音機能、自動伴奏機能などはだいたい備えています。しかし本当に役に立つ実用的な機能としては、ヤマハとローランドは値段の割に物足りない気がします。この中で実用的な機能が最も充実しているのはカワイでした。

たとえば電源をオンにしたときの設定を保存できる機能や、ラインアウトの音量を一定にできる機能、内蔵スピーカーをオフにできる物理スイッチ、スピーカーの音量を小さくしてボリュームを細かく設定できる機能、小音量時の音量バランスを最適化する機能など、使う人のことを考えた気の利いた機能が盛りだくさんなのです。

その他、イコライザーは3機種とも搭載していますが、ヤマハとローランドは3バンドなのに対し、カワイは4バンドもあります。しかも物理的なスライダーで直感的に調整ができ、メニューからプリセット値を設定したり、中心周波数を可変することまでできます。まさに痒いところに手が届くマニアックな仕様が気に入りました。

重量が決め手

音色や機能はそれぞれの良さがあるにしても、どうしても妥協できないのは重量です。可搬性ということを考えると、重量が20kgを超えるとまず一人での持ち運びは不可能です。今まで使っていたD1は16kgでしたが、それでも運ぶのは相当大変です。

重量で比較すると、P-525は22kg、FP-60Xは19.3kg、E920は17kgあります。P-525は木製鍵盤を採用しているのが魅力ですが、その分重くて、さすがに22kgというのは無理と思いました。FP-60Xも20kgに近いですから一人で運ぶのはほぼ不可能です。そうなるとES920の17kgというのがギリギリ許せる重さとなりますね。それでも決して軽くはありませんが、何とか一人でも運べる重さではあるでしょう。この時点でES920以外はあり得ないという結論になりました。

試奏は難しい

電子ピアノは高価な商品ですから、できるだけ試奏して選びたいものですが、このクラスの商品はあまり売れないため普通の楽器店に展示していることは非常に少ないです。特にES920は国内ではあまり売れてないようで、楽器店に置いてあることは稀です。カワイのHPで展示店を紹介していますが、大阪のような大都市でもわずか数店舗しかありません。ましてや地方ではまずお目にかかれません。

そこで代替的な方法としては、同じ鍵盤を採用したカワイのCN201という機種を試奏してみることをおすすめします。CN201は据置型の電子ピアノとしては売れ筋商品であるため、たいていの家電量販店にも置いてあります。鍵盤はES920と同じRH3であり、音源も同じSK-EXのサンプリングを使っていますから、ほぼ同じものと思って差し支えありません。タッチや音色の検討には十分参考になるでしょう。

ただし同じRH3鍵盤と言ってもCN201では静音化の改良が加えられているので全く同じではありません。打鍵時のカタカタ音はES920よりも抑えられているため、その点は注意が必要です。ES920は打鍵音が大きめですので、集合住宅などで気になる人は気になるでしょう。

参考になった動画

実機を試奏することは難しいですが、YouTubeでは参考になるレビューをたくさん観ることができます。なぜか国内では売れてないようで日本語のレビューはほとんどないですが、海外では人気機種となっておりレビューが豊富に出回っています。KAWAI ES920でYouTubeを検索してみて下さい。


このレビューは評者の率直な意見を述べていて大いに参考になりました。英語ですが、字幕で自動翻訳を見ることもできます。


こちらはP-525とES920の比較動画です。音色の違いをラインアウトと内蔵スピーカーの両方で聴き比べられます。


買う決め手になったのはJusim Parkさんの演奏動画です。韓国系のイギリス人のようですが、ES920を使ってクラシックの名曲を多数アップされています。どれも素晴らしい演奏で思わず最後まで聞き入ってしまいました。ES920の音色を存分に味わうことができます。

どこで買うか?

機種が決まったらあとはどこで買うかですが、値段はどこで買ってもだいたい13万円でほぼ横並びです。ですから在庫の有無とポイント還元の大きさで決めるのがいいでしょうね。

やはり国内ではあまり売れてない機種なのでどこも取り寄せになることが多いですが、サウンドハウスは比較的在庫が揃っています。急ぎで欲しい人はチェックしてみましょう。ただしポイント還元は5%となります。

自分はヨドバシドットコムで購入しました。たいてい取り寄せになっていることが多いですが、たまたま買う時に在庫があったのですぐに届きました。大型商品なので通常よりは時間がかかります。ヨドバシなら10%もポイント還元されるので、実質117,000円で買えたことになり、すごくお得でした。

旧機種の処分方法

新しい電子ピアノが届いたら、次にやることは旧機種の処分です。D1も気に入っていたので本当なら予備機として残しておきたいところですが、狭い部屋ではそんな余裕はとてもありませんので、泣く泣く処分するしかありませんでした。

車があれば自分でリサイクル店に持ち込む方法もありますが、ちょっと重たくて大変なので、楽器専門の買取店に出張買取を依頼しました。電話で申し込んだらその日のうちに取りに来てくれて、その場で査定して代金受け取り完了です。金額は思ったより少なくて定価の1割ほどになってしまいましたが、とても置いておく余裕はありませんので、断るという選択はあり得ませんでした。

これで気分一新して新しい電子ピアノライフの始まりです。レビューはまた時間を置いてから書きます。

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