以前から音楽との接点がないということに悩んでいましたが、普通に生活していれば人前で演奏したりする機会はまずないものです。中にはバンド活動やソロ活動をされている方もいますが、そういう人達は若いときから音楽の道を志していた特殊な人達で自分には縁がないという意識がありました。大人になってから音楽の仲間を見つけようと思っても、どうしていいのかわからなかったんですね。
ただ最近ふとしたきっかけでサークル的なものに入ってみたらどうだろう?と思いつきました。サークルというのはある楽器の愛好家達が集まって演奏を披露したり交流を深める会のことです。自分の場合はピアノなので割とポピュラーかもしれません。おそらく東京や大阪のような大都会ならそういうサークルはいくらでも見つかると思うのですが、地方ではなかなかないだろうなと思っていました。半ばあきらめ気味だったのですが、ネットで検索してみるとピアノのサークルが一つだけヒットしたのです。ネットの威力は絶大ですね。割と最近立ち上げられたみたいで、現状30名くらいの会員がいるようでした。活動は月に一度の練習会と、年に2回程度の発表会が主体ということです。
しばらく新規会員募集は停止していたようなのですが、幸運にも今年の春頃から募集を再開しており、恐る恐る運営者の方にコンタクトを取ってみました。すると入会条件は一度見学か体験に参加するということだけで、年齢や経験、レベルは一切問わないということでした。たぶんこの機会を逃したらもうチャンスはないだろうなと思ったので、早速次の練習会から参加させてもらいました。
練習会は通常、十数名が集まるみたいですが、日曜の午後にグランドピアノのある公民館や音楽スタジオを4時間ほど借り切って行っています。一人あたり15~20分くらいの持ち時間を割り振って、その中で練習と発表にあてる時間を各自で自由に設定します。発表はせず全部練習に使っても良いし、逆にすべて発表に割り当てても良いわけです。
普段電子ピアノしか弾いたことがないのでグランドピアノを弾けるだけでも嬉しいものです。最初の練習会ではショパンの「ノクターン第2番」と「雨だれ」を発表で弾かせてもらいました。それくらいしか自信を持って弾ける曲がないからです(笑)。それでも一人で練習するのと人前で演奏するのとでは大違いです。普段、人前で弾いた経験がないので、いきなり手がガタガタと震えました(笑)。もちろんそんな状態ではまともに弾けるはずがありません。あり得ない箇所で間違えたりします。でも最も恐れていた「暗譜が飛んでフリーズ」という状態は避けられたので(笑)、まだ良かったかなと思っています。
人前で弾くと緊張してパフォーマンスが下がるのは誰にでもあることで仕方がありません。それも含めて実力だと思わなければなりません。自分なんか人前どころかYouTubeにアップしようとしてカメラを回しただけで緊張して弾けませんからね(笑)。それもわずか十数名の前でもそんな状態ですから、何百人もの観客を前にして演奏するプロは凄いなと心から尊敬してしまいます。
ただ緊張して失敗するのは他の方も一緒でしたから、逆に安心できた面もありますね。中には演奏がストップして弾き直す方もおられましたが、ああ自分と一緒だなと妙な親近感が湧いてきました(笑)。でも失敗を恐れているといつまでも進歩できないのですね。よく失敗を恐れて完璧に弾けるようになるまで人前では絶対に弾かないという人もいますが、それでは成長のチャンスを自ら摘み取っているようなものです。上達への近道は、とにかく人前にどんどん出て恥をかくことしかないと思っています。場数を踏んでたくさん恥をかくことで、人前で緊張しないメンタルが育っていくのだと思います。それしか方法はないでしょう。幸い、こんな小さな演奏会で失敗しても何も失うものはないのですから、恥をかくために来たくらいの気持ちでやればいいんです。
一人で弾いてても張り合いがないですが、次の練習会までにこの曲を仕上げてみよう!と新たな目標ができました。自分が演奏するだけでなく、人の演奏を聴くのもいい勉強になりますし、こんな良い曲があったのかと新たな発見をすることもありますね。雑談の時間では楽譜を見せ合ったり、普段の生活の中では絶対にできないピアノの談義に花を咲かせたり、とても有意義な時間ですね。これまで見失っていた音楽との接点ができて、本当に良かったと思っています。
だいたいピアノを習っていた人って圧倒的に女性が多いので、やはりピアノサークルも女性ばっかりになりがちですが、このサークルの場合、3分の1くらいが男性でした。女性ばかりだと入りにくい雰囲気がありますが、そういう面でも気楽に入れてラッキーだったと思っています。
先月のことですが、恒例の発表会があったので見学にだけ行かせてもらいました。今回は他のサークルとの合同発表会ということで、300名が入れる大きなホールを借り切って行われました。クラシックのコンサートも行われる本格的なホールで音響は抜群です。そしてピアノはスタインウェイ。演奏者にとってはまたとない環境で弾けるチャンスですね。ただこれだけのホールを借りるにはかなりお金がかかるので、ある程度人数が集まらないと無理みたいです。それで今回は初めて実現したということでした。
全部で50名ほど演奏されたのですが、中には難曲と言われる曲をミス一つなく弾ききる方もいて圧倒されました。たぶん音大など出ておられるのだろうと思いますが、プロでも通用しそうな素晴らしい演奏でした。でも中には自分と同じように本番で緊張してミスってしまう方も多数見られました。暗譜が飛んで止まってしまうのは相当辛いと思うのですが、自分も絶対やらかしそうだから他人事に思えませんでした。この日のために練習を積んできて本番で実力を発揮できないのは相当悔しいだろうと思います。でもそれも経験ですから、恥をかいてナンボです。その悔しさを次につなげればいいんです。いつか自分もここで演奏する日が来るのでしょうか・・
ちょっと残念に思ったのは、これだけの立派なホールなのに観客はポツポツとしかいないこと。おそらくサークルの関係者とその友人・家族くらいでしょう。一応このホールは商業施設の中にあって誰でも入場自由なんですが、それでも一般のお客さんはほとんど来てくれませんでした。演奏する側にとっても観客の多い少ないで気合いの入りようが違うでしょうから、その点は少し残念に思いました。やはり事前の周知宣伝が大切なんでしょうけど、アマチュア演奏家の場合なかなか厳しいものがありますね。こういう演奏会を主催する上での集客の難しさというものも改めて実感させられました。
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