2年前にアコギを売却して以来、クラシックギターしか持っていなかったのですが、久しぶりに新しいエレアコを買いました。今回購入したのは楽器通販大手のサウンドハウスがプロデュースする楽器ブランドZENNのZG85CEというモデルです。
購入にあたっていろいろ比較検討はしてみたわけですが、実売4万円で買えるエレアコとしては最もコストパフォーマンスが高いということでこれに決めました。ただZENNのギターは一般の楽器店に置いていないため、現物を見たり弾いたりして確かめることができません。ほとんどサウンドハウスの商品ページから得られる情報しかないのですが、数少ないレビューによると評価は非常に高く、買って損はないという意見が大半です。また稀に見られるオーナーのブログでも概ね評判は良いようで、値段からは想像できないような良い音を出すと絶賛されています。
ただどのサイトを見ても画像が少なく、細部がどうなっているのか今ひとつわからないんですね。痒いところに手が届かないもどかしさを感じます。近くの方ならショールームまで見に行くことも可能でしょうけど、そうでない人はネットの情報を信じて頼るしかありません。幸いZENNのギターには14日間マネーバック保証が付いており、弾いてみて気に入らなければ返品OKという制度がありますので、イチかバチかで賭けてみることにしました。この記事では、これから買おうかどうか迷っている方の参考になるように、できるだけ画像を多く取り入れてレビューしてみたいと思います。
僕がギターを買うときに一番気にするのはボディーサイズです。というのも体が小さいので、でかいギターは弾きづらくてしょうがないからです。25年ほど前、何もわからずに楽器屋さんに勧められるまま買った初めてのギターは普通のドレッドノートタイプでした。しかしでかすぎて肩が上がり、ものすごく弾きづらかったです。おかげでアコギは辛いという意識が染み付いてしまい、大して上達もしませんでした(笑)。ですからサイズってものすごく重要なんですよ。
商品ページによりますと、このモデルはグランドコンサートタイプに分類されています。ギターのボディーシェイプのことはあまり知らないのですが、いわゆるダブルオーとかトリプルオーと呼ばれるサイズがこれに該当するようです。それなら比較的小振りで弾きやすそうだなと想像していたのですが、なにぶん写真からはサイズを想像することができません。
そこで到着後、サイズを実測してみました。中央のくびれた部分の幅が253mm、下部の一番広いところの幅が410mmでした。これは想像以上のでかさでしたね・・。この横幅は一般的なドレッドノートよりも大きく、いわゆるジャンボと呼ばれるサイズとの中間くらいに当たります。まあくびれが深い分、ドレッドノートほど抱えにくくはないのですが・・
次にボディーの厚みです。エレアコですから普通のアコギよりは薄めです。実測するとエンドピン側の厚みが97mm、ネックヒール側の厚みが85mmでした。これは一般的なフォークタイプより1センチほど薄いということになりますね。ドレッドノートに比べると2センチ以上薄いです。当然薄い方が抱えやすいですが、その分音量が小さくなるというデメリットはあります。
このギターを手に持って最初に感じた第一印象は、重い!でした。中身が詰まっていてズシッと来る重さがあります。トップの板はかなりの厚みがありますし、メイプルやウォルナットなどの重い材を使っているためにそうなるのでしょう。まるでエレキギターのような重量感です。
それでは各部の詳細について見ていきましょう。
ヘッドは飾り気のないストレートな形状です。貝のインレイが入ったロゴはキラキラしてきれいです。ゴールドのペグは高級感があっていいですね。
このギター最大の特徴は背面にあります。波状の木目が入ったキルトメイプル材がサイドバックに使われており、見た目に大変美しいです。またメイプルは硬い材なので、高音特性に優れていると言われています。ただ色合いはメイプルそのままの色なのでかなり白っぽいというか黄色っぽいです。個人的にはもう少し濃いめの方が好みですが・・
サウンドホール周りには貝のインレイが入っていて高級感を醸し出しています。サウンドホールの直径は93mmでした。
ボディーバインディングは普通の白いセルロイドです。
ヘッドの背面。オープンタイプのペグはメカニカルな美しさがありますね。ヘッドを軽量化する効果があるらしいです。
ペグにはGROVERのロゴが入っております。安物のペグはガタがあってチューニングしづらいですが、さすがGROVER製はとても滑らかに回って気持ちいいです。
ネックはアコギには珍しいウォルナットが使われています。つまりクルミですね。これも硬い材なのでネックに向いています。色合いはマホガニーよりはやや茶色っぽい感じでしょうか・・
ネックは割と薄めで握りやすく、演奏性は良好です。
ネックヒール部です。この部分にエンドピンは付いていません。
ポジションマークは大きめのインレイが入っていますが、暗くて見づらいです。プレイヤー側からは指板横のドットマークを見た方がわかりやすいでしょう。これは観客に見せるためのものですね(笑)。
ナットとサドルはスペックに材質が書かれていませんが、質感からしておそらく牛骨だと思います。
これがプリアンプです。プレゼンスを含む4バンドEQにチューナーも内蔵しています。チューナーはクロマチックタイプなので半音単位で音高を認識し、変則チューニングも自在に行えます。ただチューナーは反応が過敏な感じで、きっちり合わせるのはなかなか根気が要ります。
エンドピン兼出力ジャックもゴールドで高級感があります。
以上が細部の説明でした。全体に良い材と良いパーツが使われているので、見た目は値段をはるかに超えているようなゴージャスさです。ただ値段は値段だと思うところもありまして、表板に小傷があったり、塗料が飛んだような汚れがあったり、仕上げが雑なところも見られます。気にする人は気にするんでしょうけど、いちいちクレーム交換とかしてたらそれはまた大変な話で、音に影響がなければ気にしないのが幸せじゃないでしょうか? だいいちこのクラスのギターは無傷ということは稀なので、交換してもまた同じようなのが来ると思いますよ(笑)。
見た目の問題は別として、一つだけ気になる点がありました。それは弦高が高すぎることです。これも個体差があるかもしれませんし、人によっても高い低いの感覚は違うんでしょうけど、実測してみたら12フレット6弦で4ミリ近くありました。これは誰が見ても高いですよね? 一般的には3ミリ程度、理想的には2.5ミリと言われているので、これではハイフレット付近が相当弾きづらいです。自分でいじれる人はいいんですけど、弦高は調整するしかないと思います。
いよいよ肝心の音について感想を述べます。はっきり言ってめちゃくちゃ感動しました。これまで安物ギターしか弾いたことがないのでギターの音の違いがよくわからないんですが(笑)、これは最初に弾いた瞬間から素人でも違う!とはっきりわかりました。とにかく今までどんなギターでも聞いたことのない新しい音なんです。高音弦に艶があってスーッと伸びるような気持ちの良いサステインが特徴です。ひと言でいえばキラキラと輝くような明るいサウンドです。でも決してシャリシャリ音ではありません。高音弦の輪郭がはっきりしてかつ繊細、前にどんどん出てくるようなパワーのある高音に快さを覚えます。いつまでも弾いていたいと思わせるような気持ちいい音です。これはおそらくサイドバックのメイプル材と、重量から来るものでしょうね。
その反面、ボディー厚が薄いのでやはり低音は弱めです。生音はストロークでジャカジャカするには迫力不足を感じるでしょう。でもラインを通してEQで低音を少し持ち上げてやれば、しっかり低音が出るようになりますので、ライブで使うにはまったく問題ないと思います。ピエゾの音はどうしてもペチペチした音になりがちですが、このギターに搭載されているピックアップはあまりピエゾ臭さがなく、生音をほぼ自然に再現してくれていると感じました。
以上、ギター素人の話ですので、あまり過信しないで下さいね(笑)。でも値段を超越した音というのは本当です。これまで弾いた安物ギターは鼻が詰まったような抜けの悪い音が特徴でしたが(笑)、それとはまったく次元が違うということは素人でもわかります。生音では低音が弱いのでストローク向きではありませんが、ソロギターにはかえってバランスが良く、サステインの長い高音を生かしてメロディーを浮かび上がらせるような弾き方に向いています。もちろんアンプを通せば音作り可能なので、どんなジャンルにでも対応できます。やはりお買い得としか言いようがありません(笑)。
あとはルックス面とZENNというブランドを許せるか?でしょうね。僕は色がちょっと白すぎるのがあまり好きじゃないし、ギター好きは何かとブランドにこだわる人が多いですからね・・。まあその辺は好みの問題です。
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