スケールマッパーの概要

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スケールマッパーのスクリーンショット
スクリーンショット

『スケールマッパー』はX,Yで表現可能な任意の2次元データを音階上に割り当てて、Windows内蔵のMIDI音源で演奏させるアプリケーションです。偶然性を利用したメロディー作りが楽しめます。得られたMIDIデータはスタンダードMIDIファイルとして保存できるので、他のシーケンスソフトに読み込んで素材として利用することもできます。

音階への割り当ては任意の音域を指定できるほか、様々なスケールに対応し、キーの指定も可能です。およそ音楽家が必要とするあらゆる要望に応えられる汎用的なソフトとして開発しました。

入力となるデータファイルはカンマ区切りのCSV形式を採用していますので、Excelなどで簡単に作成することができます。基本的には時間的あるいは空間的な順序で系列化されたデータを想定していますが、必ずしも順序通りに並んでいる必要はなく、XY座標で表現可能な2次元データであればランダムな点列でも利用することができます。

開発のきっかけ

自然界に存在する何らかの配列を基にして音楽を生成するという試みはかなり古くから行われてきたようです。古典的なところでは惑星の公転周期や星座の配列を用いたものから、最近では遺伝子の配列に基づいたものまで登場しています。これらの試みの根底には、神が創造した自然の法則にしたがって配列しているデータから紡ぎ出される旋律は何らかの秩序があり、神秘的なものになるに違いないという思想があるのだと思います。

一方つい最近のことですが、今年の2月頃、NHKのETV特集で音楽家の坂本龍一さんが取り組まれている試みについて紹介されているのを見ました。その試みというのは、樹木の持つ生体電位を測定して、それを基にして音楽を創るというものです。ご覧になった方もいるかもしれません。これも従来から行われてきたデータの音階化に他なりません。それで興味を持って見ていたのですが、予想通りというか、単純に音階化してもランダムな音の羅列にしか聞こえず、とても音楽的とは呼べない代物でした。

もちろん、そうなるであろうことはほぼ初めからわかっているのですが、少し音楽の知識のある人なら必ず次のような疑問が湧いてくると思います。それは測定して得られたデータをどのような規則で音階に割り当てるのか?ということです。これは少し考えてみると、ほぼ無限の可能性があるということが誰にもわかると思います。というのは、まずデータをどの音域に割り当てるかというだけで非常に多くの選択肢ができます。同じデータであっても、音域を広く取れば取るほど引き伸ばされていくわけですから、音の散らばり具合も大きくなるはずです。また変換するにあたって、どのスケール(音階)を採用するかという点も重要です。当然、メジャーとマイナーとでは雰囲気もまったく違ったものになります。

要するに自然界に存在する配列データから旋律を作る方法というのはほぼ無限に存在するわけで、結局のところ自然の法則から創った音楽といっても、どんな変換規則を採用するかという非常に人為的な選択に帰着するという結論になるのですね。そう言ってしまうと身も蓋もないようですが、それは事実なのです。

その番組を見てから自分でも興味を持ちまして、誰でも簡単に使えるようなソフトが作れないかと思いつきました。どうせやるなら作曲にも応用できるような本格的なものを目指しました。特にスケールの選択というのは重要です。すべての音を均等に扱うクロマティックスケール(半音階)ではおそらく無秩序にしか聞こえないことは間違いないですが、メジャーやマイナー、あるいはペンタトニックといったスケールはもともと音楽的に聞こえるように作られたスケールですから、その上に限定してマッピングしていけば「運が良ければ」メロディーっぽいものができるかもしれないと考えたわけです。もちろんこれで自動作曲を行うというよりは、遊びながら作曲のヒントが得られればよいという考え方です。特に楽器の前で何時間頭を抱え込んでも何も思い浮かばないという人(自分のことです)には良い刺激になるのではないでしょうか?(笑)

スケールマッピングの概念

スケールマッピングの概念を説明する図

本アプリケーションにおける音階化の手法は非常に単純でわかりやすいものです。上図を参考に説明いたします。

まず変換の対象となるデータが左のグラフだとします。横軸にはXの値をとり、縦軸にはYの値をとります。具体的にXやYが何であるかは問いません。X,Yという組み合わせで表現できる2次元のデータであれば何でも構いません。一般的にYの値には最小値と最大値があって、すべてのデータはこの値の範囲に収まっています。

次に音階化する方法を考えます。まずどの音域に割り当てるかですが、これは最低音と最高音を指定することで行います。ここでは仮に最低音がA3(ピアノの中央付近にあるラの音)で、最高音がA5(2オクターブ上のラの音)だとしましょう。そしてデータの最小値が最低音、最大値が最高音に対応するように割り当てるものと定義します。するとすべてのデータは必ず最低音から最高音の間にマッピングされるわけです。

また指定された音域の中で実際にどの音を使うかはスケールによって決まります。最も単純なのは12音すべてを使うクロマティックスケールですが、これではおそらく全く無秩序な音列にしかなりません。メロディーらしく聞こえるためには一定の音の選び方というものが必要であり、それがスケール(音階)というわけです。本アプリケーションではよく使われる22種類のスケールから選択することができます。また同じスケールでもそのスタート位置をどこに置くかによっても音の配列は異なってきます。それを決めるのが主音(トニック)です。一般的にはキーと呼んでいるものです。つまり、音域・スケール・主音の3つが決まってはじめて音階化すべき音の配列が決まるわけです。上の例ではAから始まるメジャースケールを選択したものとします。鍵盤が水色になっている部分が実際に使われる音を表します。すべてのデータはその大小に応じて、水色の音のいずれかにマッピングされるという仕組みです。

一方時間軸方向の流れですが、本アプリケーションではX軸方向のデータの間隔がそのまま音符の長さに対応するように変換する方法をとっています。実際の変換割合はパラメータで指定することが可能です。一定時間ごとに測定したデータのように、元のデータが等間隔で並んでいれば当然ながら規則正しい音のリズムになりますが、そうでない場合はリズムにゆらぎが生じ、それが面白い効果を生み出します。

応用例

簡単に使えると言っても、こういうソフトは元になるデータがなければ何も始まりません。CSVファイルを作成するためには少しばかり手間をかけなければなりません。しかし対象となるデータはその気になって探せば身の回りにいくらでも転がっているといえます。

実験や観測などでPCから制御可能な測定機器を使っている場合には、容易にCSVファイルを得ることが可能でしょう。そうでない場合でもExcelで編集すれば簡単に作成することができます。たとえば日々の気温の変化とか、株価の変動など、ネット上で公開されたデータがあればコピーして作成することができます。それもなければ自分で打ち込んでいくらでも作ることができます。身近なところでは、体重の変化とかも面白いかもしれません(笑)。もちろんまったくデタラメに打ち込んでも構いませんし、サイコロを振って決めても構いません。何を使うかは好奇心次第でいくらでも見つかるはずです。

またこういった目的に最適なのはGPSで記録された移動の軌跡です。時間とともに変化する速度などが記録されているわけですから、データとして非常に扱いやすいものです。最近はスマートフォンでもGPSの記録を取ることができますので、かなり身近になってきています。しかし今のところ直接CSVファイルに書き出すことができないのが難点です。本アプリケーションにはGPSログから抽出したデータをサンプルとして添付しています。その他、写真のピクセルを解析してデータに変換することも可能と考えています。今後の予定としては、GPSログや写真からCSVファイルを生成するソフトの開発も検討しています。

ソフト種別

フリーソフト

主な機能

  • 任意の2次元データのCSVファイルに対応。
  • Windows内蔵のシンセサイザーで試聴可能。
  • マッピング結果をスタンダードMIDIファイルに保存可能。
  • 22種類のスケール指定、音域指定、キー指定が可能。
  • テンポ、音色、ベロシティーの指定が可能。

動作環境

Windows 2000/XP/Vista/7

ただし動作確認はWindows 7とXPでしか行っていません。

インストール

ダウンロードしたアーカイブを適当なフォルダに解凍してください。実行ファイルは”ScaleMapper.exe”です。必要に応じてショートカットを作成して下さい。

アンインストール

レジストリは使用しませんので、インストールしたフォルダを削除するだけでOKです。

ダウンロード

最新バージョン  Version 1.01 (2012.4.7)

ScaleMapper_v101.zip

サポート

本アプリケーションへのバグ報告やご質問・ご要望はこの記事へのコメントでお願いします。

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