【ABC記譜法】基礎の基礎

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ABC譜から楽譜やMIDIに変換する方法がわかったところで、それでは実際にABC譜を作成する要領について解説していきましょう。

本講座では特別な意図がない限りEasyABCを使っていくものとしますが、バージョンが古いせいかEasyABCの画面に表示される楽譜はコマンドラインで作成したSVGと異なっている場合がたまにあります。したがって、最終的にはSVGに出力して確認することをおすすめします。MIDIについても同様で、EasyABCの再生ボタンをクリックしてもうまく行かない場合がたまにあります。やはりMIDIも最終的にはMIDIファイルに出力して確認すべきです。EasyABCはあくまでも入力補助用として使うことをおすすめします

音高の表現方法

ABC記譜法では大文字の A~G および小文字の a~g のアルファベットを使ってすべての音高を表します。具体的には下の譜面を参照して下さい。

exercise2a
ここで大文字の C がピアノの中央の「ド」を表し、小文字の c が1オクターブ上の「ド」を表します。まずこれを基本中の基本として頭に叩き込んで下さい。

あとは通常の英語の音名通りです。といっても、少々音楽をかじった方には当たり前でも、一般の方には英語の音名がわからないかもしれませんね。いわゆるイタリア語読みの「ドレミファソラシ」と英語の音名は次のように対応します。

ド→C
レ→D
ミ→E
ファ→F
ソ→G
ラ→A
シ→B

これはもう慣れるしかないので、いちいち頭で考えなくても瞬時に出てくるくらいに暗記しちゃって下さい。

次に中央のドより低い音域は音名の後ろにカンマ(,)を付けます。前ではなく後ろであることに注意して下さい。そしてさらに1オクターブ下のドより低い音域には音名の後ろにカンマを2つ付けます。以下同様で、1オクターブ下がるごとにカンマが1つ増えます。

今度は高い方ですが、中央の「ド」から2オクターブ上、すなわち小文字の b より一つ高い「ド」は c’ のように音名の後ろにアポストロフィー(‘)を付けます。以下同様で、1オクターブ上がるごとにアポストロフィーが1つ増えます。

音高については以上の規則がすべてです。基本的には CDEFGABcdefgab で一番よく使う2オクターブを表し、それより外側はカンマが付いたりアポストロフィーが付いたりするということです。

ヘッダの書き方と音価の表現方法

それでは上で覚えたことを元にしてABC譜の作成練習をしてみましょう。今度は音の長さ、すなわち音価についての理解が中心となります。

練習として次のABCコードを入力して下さい。初めてですからなるべくコピペせずに手打ちするのがおすすめです。


I:abc-charset utf-8
X:1
T:練習2
M:4/4
L:1/8
Q:1/4=100
K:C treble
%
F, G, A, B, C D E F | G A B c d e f g | a b c' d' e' f' g' a' |
CDEF GA B c | C2 G2 c4 | B8 | F6 A2 |
C/D/E/F/ G/F/E/D/ C//D//E//F// G//F//E//D// C2 | G3E CD3 | C>D E<G C3/2D/ E/G3/2 |
C2>E2 C3E | G/>A/ B/<A/ G3/4A// B//A3/4 G4 | z4 z2 z z/z/ | z8 | z3/2 z/ z3 z z2 |

ヘッダ

ABC譜の先頭には必ずヘッダというものを記述します。これは曲全体に関係する情報を一括して記述するものです。それぞれの行は「フィールド」と呼ばれます。

■1行目:
“I:abc-charset utf-8″は文字コードがUTF-8で書かれていることを指示するものです。これを先頭に記述するとEasyABCは自動的にUTF-8で保存してくれます。テキストエディタで作成する場合は、必ず文字コードをUTF-8として保存して下さい。でないと文字化けします。日本語を使うためにはこれは必須ですから、英語しか絶対使わないという方以外は「おまじない」と思って必ず記述するようにして下さい。

■2行目:
X:で始まるフィールドには曲順を指定します。ABC譜では1つのファイル中に複数の曲を同居させることができるのですが、前から順にX:1, X:2, X:3,・・・と順番を付けていきます。といっても普通は1ファイルに1曲の方が扱いやすいでしょうから、常に1だと思って構いません。このフィールドは省略できないので、たとえ1曲しかなくても必ず”X:1″と書きます。

■3行目:
T:で始まるフィールドは曲のタイトルを指定します。これが楽譜の一番上に表示されます。日本語も使用可能です。

■4行目:
M:で始まるフィールドは拍子(Measure)を指定します。”4/4″と書けば4分の4拍子を表します。同様に”3/4″なら4分の3拍子、”6/8″なら8分の6拍子です。また4分の4拍子は”C”と書くこともできます。

■5行目:
L:で始まるフィールドは基準となる音符の長さを表します。少しわかりにくいのですが、”1/8″と書けば「8分音符の長さを基準としますよ」という意味になります。つまり8分音符の長さを1だとすれば、4分音符は2となり、同様に16分音符は1/2となるわけです。これにはデフォルト値というものがあって、4分の4拍子の場合は指定しなくても自動的に”L:1/8″となりますが、曲によっては変更した方が記述が楽になる場合があります。たとえばほとんどが4分音符でできている曲であれば、L:1/4″とすると4分音符の長さが基準になるので、コードをより簡潔に記述することができます。ある程度やってるとわかりますが、まず譜面全体を見渡してどの音符を基準にすると一番楽になるかを考えるようにして下さい。

■6行目:
Q:で始まるフィールドはテンポを表します。”1/4=100″と書くと1分間に4分音符が100個、すなわち100BPMというテンポになります。これはMIDIを再生する際に反映されます。またQ:の後ろにダブルクォートで囲って”Moderato”のような速度表現記号を付けることもできます。

■7行目:
K:で始まるフィールドは曲の調(Key)を表します。音楽を少し知っている方ならすぐわかると思いますが、”C”と書けばハ長調を意味します。短調の場合は小文字の”m”を付けて”Cm”のように記述します。またシャープは”#”を付けて”C#”のように、フラットは小文字の”b”を付けて”Bb”のように記述します。ここで指定した調に応じて、五線には調号が自動的に付けられます。そしてスペースを1個空けて”treble”とありますが、これは「ト音記号」で表示するという意味です。これをもし”bass”にすると「ヘ音記号」になります。

以上がヘッダを構成する基本的なフィールドですが、いちいち書くのはめんどくさいので、ここまでを記述したファイルを”template.abc”のような名前で保存しておき、「ひな形」として利用すると便利です。この中で絶対に省略できないのはX:フィールドとK:フィールドの2つです。また一応順番というものがあって、K:フィールドはヘッダの一番最後に書かなければならないことになっているので注意して下さい。

コメント

K:フィールドの下に % という記号がありますが、これはコメント行を意味します。% より後ろは無視されるため、メモ書きなどを自由に記述することができます。コメントはその行についてのみ有効です。

なおABCコードの中に空行があるとエラーになるため、行を空けたいときはこのように先頭に % を置くようにして下さい。

ボディー

ヘッダより下の部分をボディーと呼び、ここに楽譜の本体部分を記述します。このABCコードを入力してSVGを出力すると次のような楽譜になります。

exercise2
以下、この譜面とABCコードを見比べて解説していきます。

音価の表現方法

■1~3小節目:
これは音階の練習です。上で説明した通りですので特に言うことはないでしょう。ここで大事なことは、基準の長さが8分音符となっているため、何も指定しなければすべてが8分音符になるということです。たとえば単に C と書けば、「ド」の8分音符を意味します。8分音符1個分だから C1 と書いてもいいわけですが、基準の長さはあえて書かなくてもいいことになっています。

なおEasyABCで入力していると、音符を8個入力した後にスペースキーを押すと自動的に | が挿入されたと思います。これは8分音符8個で1小節分の長さに達したためです。ABC記譜法では | は小節線を表します。このようにEasyABCでは自動的に音符の長さをカウントして小節線を挿入してくれる便利な機能があります。

そしてABC記譜法では、ABCコード上の1行が楽譜の1行に対応します。つまり改行を入れたところで次の行に移るわけです。特別な指定をしない限りそうなりますので、覚えておいて下さい。

■4小節目:
これも全部8分音符ですが、音符の「旗」がつながっているものとつながっていないものがありますね。こういうのを「連桁」と呼んでいますが、ABC記譜法ではスペースを入れずに書けば旗がつながり、間にスペースを入れると分けて表示されるようになります。これはとても単純でわかりやすいでしょう。もちろんこのルールが適用されるのは8分音符、16分音符、32分音符などの「旗」を持つ音符に限られます。

■5小節目:
4分音符は8分音符2個分ですから、C2 のように後ろに 2 を付けて記述します。同様に2分音符は8分音符4個分ですから、c4 のように後ろに 4 を付けます。

■6小節目:
全音符は8部音符8個分ですから、B8 のように後ろに 8 を付けます。

■7小節目:
付点2分音符は2分音符の1.5倍の長さ、言い換えれば8分音符6個分ですから、F6 のように後ろに 6 を付けます。

■8小節目:
今度は8分音符より短い音符です。これらは8分音符の分数として表します。16分音符は8分音符の半分ですから、本来なら C/2 のように書きますが、さらに省略して C/ と書くことが許されています。つまり / が半分の長さを意味するわけです。

同様に32分音符は8部音符の1/4の長さですから、本来なら C/4 のように書きますが、これも C// と書くことが許されています。つまり16分音符のさらに半分という意味ですね。文字数は同じでもこちらの方が手を動かす量が少なくて済みます。

■9小節目:
付点4分音符は4分音符の1.5倍の長さですが、言い換えれば8分音符3個分なので G3 のように後ろに 3 を付けます。

■10小節目:
ここで付点8分音符と16分音符の組み合わせが出てきました。こういう3:1のリズムは俗に「跳ねるリズム」と呼ばれますが、楽譜ではしばしば見かける音型です。ABC記譜法の素晴らしいところは、このリズム専用の表記法が用意されていることです。

ここで C>D のように > を間に入れると自動的に3:1のリズムになります。もし > がなければ「8分音符+8分音符」ですが、> を入れたことによって左側が大きくなったと覚えて下さい。また逆に < を入れると右側が大きくなって、1:3のリズムになります。 もちろん「付点8分音符+16分音符」として、C3/2D/ のように書いても譜面上はまったく同じになりますが、文字数がずいぶん違いますよね。付点8分音符は8分音符の1.5倍の長さですから 3/2 と書くことができるのですが、これをいちいち書くのは相当面倒です。それが C>D で済んでしまうのですからいかに簡潔かわかるでしょう。Finaleのような譜面作成ソフトでもこういう音符を入力するのは非常にめんどくさいので、これこそがABC記譜法の真骨頂と言えます。

■11小節目:
これも3:1のリズムではありますが、この場合「4分音符+4分音符」の変形となるため、C2>E2 のように書かなければなりません。一方で「付点4分音符+8分音符」としても書けるわけで、この場合は基本通り C3E と書いた方が文字数が少なくなります。何でも臨機応変に対応して下さい。

■12小節目:
今度は「付点16分音符+32分音符」のリズムです。これは「16分音符+16分音符」の変形と考えると G/>A/ のように書くことができます。また基本通り「付点16分音符+32分音符」として記述すれば G3/4A// でもいいのですが、これではずいぶんわかりにくくなります。この場合は前者の方が簡潔でわかりやすいと言えるでしょう。

■13~15小節目:
ここからは休符になります。休符は小文字の z で表現します。大文字で書くと別の意味になるので注意して下さい。休符の長さについても音符とまったく同じ要領になります。

全休符 → z8
2分休符 → z4
4分休符 → z2
8分休符 → z
16分休符 → z/
付点4分休符 → z3
付点8分休符 → z3/2

これで基礎編は終わりです。基本的に「音高+音価」の組み合わせで書けるということがおわかりいただけたでしょうか? ここまで理解できれば簡単な曲くらいはすぐ書けると思いますよ。

なお、ここで説明したのは基準の長さが8分音符の場合であることに注意して下さい。もし4分音符や16分音符を基準にした場合は、それにしたがってすべての音価が相対的に変化します

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