終わりに

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これまでコード進行の理論とメロディーの作り方について一通り解説してきたわけですが、これはまだほんの「さわり」に過ぎません。しかしここで紹介したことをすべて理解できればもう自由にコード進行を作ることができるようになっているはずです。あとそこからメロディーを生み出すのは「慣れ」だけです。最後に作曲の極意としてもう一度まとめておきましょう。

まず全体の設計図を作る

前に説明したように、曲というのはいくつかの楽節が集まってできています。その一つ一つの楽節は4~8小節くらいのごく短いもので、あとはその繰り返しや変形で成り立っています。したがって3つくらいの楽節を作れれば曲はもう完成したも同然なのです。そのためにはまず楽節をどのような順序で並べていくか設計図を作っておくと後々の作業がスムーズに進められます。

コード進行は後ろから作る

前から作った方が作りやすいという方は別にそれでも構いませんが、終止のパターンは決まっているので、そこへうまくつながるように導いた方が確実にスムーズに作れます。これは曲の終わりという意味ではなく、各楽節の終わりを意識するという意味です。楽節の終わりというのは全終止・半終止・偽終止のいずれかのパターンに分類されますから、最後の和音が決まればそこから逆にたどってコード進行を作っていくことは容易です。そうしてやれば思っていたのと違う方向へ行ってしまうこともありません。

良いメロディーを作るには

コードが決まればメロディーに使える音も自ずから決まってきます。それだけで何もないところから作るよりは楽になるはずですが、良いメロディーを作るための秘訣についてご紹介しておきましょう。

コードの内音を骨格にして適当に外音を混ぜる

先にコードが決まっている場合、そのコードの構成音だけを使えば確実にメロディーと協和しますが、それだけではいかにも面白くないメロディーになってしまいます。音楽というものは、要は緊張と弛緩の繰り返しですから、構成音以外の音で緊張状態を作ってから弛緩させてやるといい感じのメロディーになるわけです。その際、コードの構成音との響き具合を意識することも大切です。慣れてくると聴いていて気持ちいい音程と気持ち悪い音程は経験的にわかってくるはずです。

リズムに変化を付ける

全部4分音符や8分音符だけで作ったメロディーはいかにも幼稚に聞こえてしまいます。そこで付点の付いた音符を使ったり、時には3連符も使ってやるとリズムに変化が生まれてカッコ良く聞こえます。また休符を入れたり、半拍ずらしてシンコペーションを取り入れたりするとぐっと音楽的なノリが生まれてきます。この辺はセンスの問題ですが、音階はまったく無視して机などを叩いてみるのもよい練習になるでしょう。

同じパターンを繰り返す

いくら斬新なメロディーといっても、まったく繰り返しがなく常に変化し続けるようなメロディーは覚えにくく、聴いていて疲れてしまいます。人間は同じパターンを何度か繰り返されるとしっかり耳に残って覚えやすくなるものです。したがって2小節くらいの短いモチーフを単位として繰り返すのは大変効果的です。その際、まったく同じものを繰り返すのではなく、音程を変えてみたり、リズムを変えてみたりすることによって飽きの来ないキャッチーなメロディーになります。大切なことは、すぐ覚えられて口ずさめるようなメロディーになっているかどうかです。

コード先行型は絶対ではない

ここでは先にコード進行を作る方法で説明しましたが、それは必ずしもそうしなければならないというわけではありません。散歩しているときにふっといいメロディーが浮かんで、それを元にして曲を作ってみたというのももちろんアリです。僕もどちらかといえばコード進行からメロディーを作るのは苦手なタイプで、たいがいメロディー先行型で作ることが多いです。でもいくら考えてもメロディーが浮かばないときは先にコード進行という「枠」を作ってやった方がきっかけができるというのも確かです。要はその時その時で作りやすい方法を選べばよいのであって、いずれかにこだわる必要もありません。時には違う方法で作ってみると意外な曲が生まれる可能性もあるでしょう。

既存の曲のコード進行を分析する

世の中で名曲と言われているような曲は何が心地良いのか、その理由を研究することもいい勉強になります。ただ漫然と聞くのではなく、そのコード進行がどうなっているかを分析するのです。といっても自分で音を取るのはなかなか難しいでしょうから、市販の楽譜を買ってくればコードがちゃんと書いてあります。それを見てどういう原理でつながっているのかを自分なりに説明してみるのです。

既存の曲のコード進行をパクる

どうしても自分でコード進行を考えられないときは、お気に入りの曲のコード進行をそのまま取り入れてみるのもアリです。コード進行に著作権はありませんから、パクっても盗作にはなりません。そのコード進行に自分のメロディーを当てはめてやれば自分だけのオリジナル曲のできあがりです。同じコード進行でもまったく別の曲を作ることができるといういい勉強になるでしょう。

既存の曲にコード進行をつけてみる

逆にすでにあるメロディーにコード進行をつけるというのもいい勉強になります。できれば楽譜は見ないで自分でコード進行を考えてみることがおすすめです。特によく知っている童謡などがいいでしょう。メロディーにコードを割り当てる方法は決して一通りではないことに気づくはずです。そうして同じメロディーであってもまったく別の曲に生まれ変わらせることだって可能なのです。これをリハーモナイズと呼びます。この練習をすれば、メロディーが単純であってもコード進行を工夫すればカッコよく聴かせることも可能であるということがわかるでしょう。

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