ここまでの解説で一通りコード進行が作れるようになったところで、いよいよコード進行からメロディーを生み出す方法に移っていきます。ここでは初心者が陥りやすい「童謡みたいになってしまった」という失敗をどうやって直していくのかを例にとって具体的に説明していきます。
なぜ童謡になってしまうのか?
作曲を始める動機は人それぞれですが、「泣かせるバラードを作ってやるぞ!」とか意気込んで作曲を始めたものの、出来上がった曲を聴いてみると幼稚園のお遊戯の時間に流れているような「童謡」になってしまったという笑えない失敗が誰にも一度や二度はあるものです。それが続くと「自分には才能がない」と嘆いて作曲そのものをあきらめてしまう最大の原因になります。
実は童謡みたいになってしまうのにはちゃんとした理由があって、音楽理論の知識がまったくなしに思いつくままにメロディーを作っていくと誰しも多かれ少なかれそうなってしまうのです(よほどの天才を除いて)。
ではその原因を探るために「わざと」童謡っぽく作ってみましょう。まず前章で説明した原理にしたがってコード進行を組み立ててみます。最初はコードの機能別に並べるだけでしたね。ここでは8小節の曲を仮定し、次のように並べてみました。
T→SD→D→T→SD→T→D→T
キーをCメジャーとし、主要三和音だけを使うことにすると次のようなコード進行が出来上がります。
C→F→G7→C→F→C→G7→C
ここからメロディーを作っていくわけですが、一番簡単なのはコードの構成音だけを使ってメロディーを作ることです。コードの構成音に含まれる音を内音、含まれない音を外音と呼びます。内音はコードの構成音ですから、完全にコードの響きと協和します。ですから内音だけでメロディーを作ると確実にコードに溶け込んでくれるわけです。ここではコードの内音だけを使って適当にメロディーを作ってみました。
できればコードを弾きながらメロディーを弾いてみて下さい。いかにも童謡っぽいメロディーですね。ここではわざとそうしたわけですが、童謡っぽく聞こえるメロディーにはいくつかの法則があります。
- コード進行が主要三和音だけでできている
- コードの内音だけを使ってメロディーを作っている
- リズムが単純すぎる
上に挙げた3点が「幼稚」に聞こえるメロディーの三大法則だと思います。実際、童謡というのはほぼこの法則に当てはまっています。そして童謡を作るつもりがなくても、音楽理論を知らずに思いつきだけでメロディーを作っていくと、この法則に見事に当てはまってしまうのです。それはなぜかと言いますと、主要三和音というのはそれだけで完結しているので、転調をしない限り、どんなメロディーであってもすべて主要三和音のいずれかに当てはまるからです。つまり無意識のうちに主要三和音に当てはまるようなメロディーを作らされてしまうということですね。ちなみに本当の意味で童謡を作るのはかえって難しいと思います。なぜなら子供を喜ばせるためには子供の気持ちになって作曲しなければならないからです。
なぜ童謡っぽくなるのかがわかったところで、次章以降では、いま作ったメロディーをベースにして、少しずつ改良を加えていくことを考えます。
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