スケールと音程

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音楽理論というのはどうにも退屈なものですが、ひらめきだけで作っていける天才を除いて避けては通れないものです。これを知っているのと知らないのとでは出来上がった作品の「質」が全然違ってきます。まあ知っておいて損はないことは確かです。どうせ避けては通れないのなら、一度覚悟を決めて真面目に取り組んでみましょう。とはいっても、あまり退屈にならないようにどうでもいいような枝葉のことは避け、作曲にすぐ応用できるような実践的なものにしていきたいと思います。

作曲をしたいけれども自分は楽譜が読めないという方も中にはいるかもしれません。しかし楽譜は楽譜で奥の深いものですから、一から説明しているとそれだけで一冊の本になってしまいます。ここではそこまでやっている余裕はないので、一応楽譜は読めるものとして話をさせていただきます。あとピアノとかキーボード、ギターなど和音の出せる楽器を手元に用意することをおすすめします。

音楽理論を始めるにあたって、最初にどうしても知っておかなければならないことはスケール(音階)と音程です。以後、至るところで音程が何度という表現が出てきますので、まずこれに慣れておかなければなりません。

スケール

スケールとは?

スケールとは日常的に「音階」と呼んでいるもので、誰でも知っているドレミファソラシドがこれにあたります。ピアノの白鍵だけを使って弾けば自然とそうなりますね。しかしこれだけではないのです。

たとえばレから始まる音階というのもあります。この場合、ピアノの白鍵だけで弾くことはできず、レミファ#ソラシド#レのように黒鍵を2つ使う必要がありますが、やはり同じように聞こえます。違いは1音分上に音の高さがシフトしたことだけです。半音も含めると1オクターブの間に全部で12の音がありますから、同様にして12通りの音階を作ることができます。これらは音の高さが違うだけで、どれもまったく同じように聞こえる性質を持っています。このようにドレミファソラシドを平行移動させてできた音階を長音階(メジャースケール)といいます。

一方、ピアノの白鍵だけを使ってラシドレミファソラと弾いてみると、何か暗い感じがしますね。これが短音階(マイナースケール)です。長音階と同様に、短音階も性質がまったく同じで音の高さだけが異なる12種類の音階を作ることができます。もちろんドから始まる短音階もあるのですが、フラットが3つも付いてややこしくなってしまうため、ここではラから始まる短音階を使うことにします。

長音階と短音階の違い

長音階は何となく明るい感じ、短音階は何となく暗い感じに聞こえますが、それはどこから来るのでしょうか?

全音と半音の説明

ピアノの鍵盤を見ると、だいたい白鍵と白鍵の間に黒鍵があります。黒鍵というのは両隣にある白鍵の間の中間の音(半音)を出すものですが、半音を基準に考えれば、たとえばドとレの間には黒鍵が1つありますから、半音2つ分と考えることができるわけです。このように半音2つ分のことを全音といいます。しかしよく見ると黒鍵のない部分が2箇所ありますね。それはミとファの間と、シとドの間です。黒鍵が間に挟まってないということは、これは半音単位で隣り合っていることを示しています。

長音階と短音階

これをまとめてみると上図のようになります。長音階では3番目と4番目、および7番目と8番目の音の間が半音であるのに対し、短音階では2番目と3番目、および5番目と6番目の音の間が半音になります。結局、長音階と短音階の違いとは、半音が何番目に来るかの違いだけだったのです。

音の呼び名

学校の音楽では音名をドレミファソラシドと習ったと思いますが、これは実はイタリア語です。そして日本語ではハニホヘトイロハということも習ったと思います。ハ長調とかホ短調とかいうのはここから来ているわけです。一方ポピュラー音楽の世界では英語の大文字を使うのが一般的です。ドレミファソラシはそれぞれCDEFGABに対応します。つまりCがドで、Aがラです。この音階はCから始まっていますが、スケールの起点となる音のことを主音(トニック)と呼びます。Cから始まる長音階であれば主音を前に冠してCメジャースケールと呼ぶわけです。今後ポピュラー式の音名表示が頻繁に表れますので、慣れておいて下さい。

調(キー)

メロディーや和音が主音を中心にして関連付けられているとき、調性があるといいます。これはメロディーや和音がどのように展開しても最終的には主音に戻ってくるという性質を持っています。いわば主音には強い重力が働いているわけです。

曲の調(キー)には大きく分けて長調(メジャー)と短調(マイナー)があり、それは使用している音階が長音階であるか短音階であるかによって決まります。またどの音を主音とするかによって12種類のバリエーションが生まれます。したがって調は全部で12×2=24通り存在するわけです。

ポピュラー音楽では主音の音名と長調・短調を組み合わせてCメジャーとかAマイナーのように呼ぶのが普通です。さらに省略してCやAmのように書くこともあります。一方クラシックでは音名を日本語表記してハ長調やイ短調のように呼ぶのが一般的になっています。

それ以外のスケール

ここでは長音階と短音階について説明しましたが、実はそれだけではなく、民族音楽などで使われる独特の音階が数多く存在します。たとえばアラビア音楽で使われるアラビア音階や、沖縄民謡で使われる琉球音階といったものがあります。しかしポピュラーを含めた西洋音楽ではこの長音階と短音階が基本で、とりあえずこれだけ理解しておけば十分なわけです。

音程

音程の数え方

音と音の間の隔たりのことを音程といいます。これはもちろん時間的なものではなく、音の高さによるものです。音程を表すには「度」という数え方をします。一例として、Cメジャースケールにおける音程を1オクターブ分示すと下図のようになります。

音程

ここで左端のドは一つではなく、同じ音が二つ重なっていると思って下さい。つまり二つの楽器で同じ音を鳴らしている状態です。これをユニゾンと呼ぶこともあります。ここでちょっと不思議なのは、ゼロではなく1度と数えることですね。数学的に考えれば差し引きゼロの方が自然なように思えますが、そういうことになっているので仕方ありません。

そしてスケール上の2番目の音との間は2度と数えます。同様にして3度、4度、5度・・と続くわけです。そしてちょうど1オクターブ離れた音は8番目の音ですから、8度と数えます。ちなみに1オクターブを超えても9度、10度・・と数えることができます。

ここで1度、4度、5度、8度にはなぜか「完全」という言葉が付いています。この意味は正確なところは知りませんが、おそらく「完全に響き合う音」という意味で付けているのだろうと思います。1度は自分自身ですから当然完全に響き合います。また物理的に言うと1オクターブ上がると周波数がちょうど2倍になります。そして周波数が整数倍の音というのは濁ることなくきれいに響き合う性質を持っています。ですから1オクターブ上の8度というのも完全に響き合うわけです。では5度はどうかというと、実はちょうど主音の1.5倍の周波数になっているのです。自然界に存在する音はすべて倍音を含んでいますから、当然その2倍にあたる3倍音も含んでいるわけです。そうするとやはり主音ときれいに響き合います。実際、ピアノのドとソを同時に弾いてみると非常にきれいに響き合うことがわかるでしょう。残る4度はそういう倍音関係にはないので、なぜ完全なのか不思議に思われますが、これはファの音を1オクターブ下げてみると主音と5度の音程になることから、やはり3倍音の関係にあるのです。つまり実質上、4度は5度と同じだということです。

短音程と長音程

上の図で「完全」が付かないのは2度、3度、6度、7度の4つですが、実はこの書き方はあまり正確ではありません。少しややこしいのですが、それぞれに長音程と短音程というものが存在するのです。

これは半音単位で数えた方が理解しやすくなるので、もう一度書き直してみましょう。

  • 半音0個分→完全1度
  • 半音1個分→短2度
  • 半音2個分→長2度
  • 半音3個分→短3度
  • 半音4個分→長3度・減4度
  • 半音5個分→完全4度
  • 半音6個分→増4度・減5度
  • 半音7個分→完全5度
  • 半音8個分→短6度・増5度
  • 半音9個分→長6度
  • 半音10個分→短7度
  • 半音11個分→長7度
  • 半音12個分→完全8度

スケールにおける全音と半音の並びを考えてみるとわかりますが、メジャースケールの場合、2度、3度、6度、7度はすべて長音程となり、それぞれ長2度、長3度、長6度、長7度と表記します。ですからこれが正確な言い方になるわけです。一方、マイナースケールの場合は、2度は長音程、3度、6度、7度は短音程となり、それぞれ長2度、短3度、短6度、短7度と表記します。

増音程と減音程

上で唐突に「増」とか「減」という文字が出てきましたが、これはそれぞれ増音程・減音程を示し、理論的には次のように定義されています。

  • 増音程とは、完全音程または長音程より半音広い音程をいう。
  • 減音程とは、完全音程または短音程より半音狭い音程をいう。

これだけを見るとわけがわからなくなりそうですが、実際にはポピュラー音楽では増音程や減音程は4度か5度に対してしか使われません。特に半音6個分にあたる増4度または減5度というのが重要な意味を持っています。したがってこれだけ覚えておけばまず十分でしょう。なお半音4個分、半音8個分については2通りの表し方ができることに注意しましょう。

再び長音階と短音階の違い

長音階および短音階における音程をもう一度正確に書いてみましょう。

【長音階】完全1度、長2度、長3度、完全4度、完全5度、長6度、長7度、完全8度
【短音階】完全1度、長2度、短3度、完全4度、完全5度、短6度、短7度、完全8度

こうやって見ると、長音階と短音階の違いは3ヶ所ありますが、中でも特に3度が長3度であるか短3度であるかが大きな違いです。後にコードを構成する際に、この3度の音というのが中心的な役割を果たすことがわかります。

協和音程と不協和音程

二つの音を同時に鳴らしたとき、きれいに響き合う音程を協和音程、濁り合う音程を不協和音程といいます。大きく分けると、1度、3度、4度、5度、6度、8度が協和音程で、それ以外の2度、7度および増や減が付く音程が不協和音程となります。これは同時にピアノの鍵盤を弾いてみれば耳ですぐわかるでしょう。

協和音程は理論的にはさらに細かく分類されていて、完全1度と完全8度を絶対協和音程、完全4度と完全5度を完全協和音程、長3度、短3度、長6度、短6度を不完全協和音程といいます。絶対・完全・不完全という言葉が頭に付くのは、この順に協和度が弱くなることを表しています。特に3度や6度というのは物理的に考えるとかなり高い倍音成分でようやく響き合うので、協和度としては弱いわけです。でもこんな言葉を覚える必要はありませんので、「不協和音程は2度と7度または増減音程に限られる」と覚えておけば十分でしょう。

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